2020.04.03

世界初、抗老化候補物質「NMN」のヒトへの安全投与を確認した

  慶應義塾大学の伊藤裕教授らと老化研究の第一人者である米国ワシントン大学の研究グループの今井眞一郎教授らは「Effect of oral administration of nicotinamide mononucleotide on clinical parameters and nicotinamide metabolite levels in healthy Japanese men」を日本内分泌学会が発行する『Endocrine Journal』に発表し、抗老化候補物質として期待されるニコチンアミド・モノヌクレオチド(NMN)が、健康なヒトに安全に投与可能であることを、世界で初めて明らかにした。

  今までの研究では、様々な臓器の細胞に存在するニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)レベルの低下が加齢に関連する障害を引き起こし、NAD+を増加させる治療アプローチが実験の対象をとした動物にこれらの障害を防ぐことが明らかになりました。ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の投与は、加齢に関連する機能障害を軽減することが示されていた。ただし、ヒトに対してNMNの安全性はまだ不明である。今回の研究では、健康な日本人男性10人(40~60歳)を対象に、研究期間中同じ人に異なる量(100mg,250mg,最大500㎎)のNMNを経口で各1回投与した。全ての用量でNMNの摂取後に、血圧・脈拍に変化はなく、肝臓や腎臓などの機能をみる血液・尿検査でも基準値を超える変化はなかった。視力などの目の機能、睡眠の状態にも影響がなかった。さらに、投与量が増えるほど、NMNから作られる代謝産物の血中量も増加していた。

  したがって、単回経口投与されたNMNは、安全であり、健康な男性に有害的な副作用を引き起こすことなく、効果的に代謝させたことをわかった。NMNは、長寿に関わるとされる「サーチュイン」という分子を活性化でき、加齢により増える疾病の予防を目指し組織中のNAD+を増加させる治療法に有力候補の一つと示された。